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忙しい言い訳として、心理学実験で音刺激 (聴覚刺激) を使用する際の留意点を書いておこうと思います。

1.アタック音が出る
 人工的な音(pure toneでも complex toneでも)は、基本的に一気に振幅が100%になるためか、
開始時と終了時にアタック音(プチッという音、クリック音?)が出ます。
こう聞こえてしまう原理は誰か詳しい人教えて欲しいのですが、原理はともあれ単純に気になってしまうので除去する必要があります。
 一番楽なのは fade in/outをかけてしまうことなのですが、そうすると音が100%になるまで何msかはかかってしまうわけで、このあたりが剰余変数になるような実験だと使えないかもしれません(その場合の方法は、自分で調べてください…ごめんね)。このアタック音というのか、クリック音というのか、ノイズというのかわかりませんが、こういうのがあるぞ、ということは確実に押さえておいたほうが良いと思います。

2.スピーカを過信してはいけない
 中学理科では、「振幅が等しい周波数は音の大きさも等しい」と習ったかと思いますが、現実的には、電気信号段階では確かにそうなんですが、いったんスピーカを通すとそれはウソになります。
 スピーカによっては、低音を減衰させてしまったり、その逆があったりして、80dBで設定したはずが、高音は79dBになっていたりします。どっちみち座る場所によって聞こえ方が違ったりもしますし、イアホンつけてもつけかたで聞こえ方は変化するのが当然といえば当然です。なので、1dB程度の誤差は多くの場合問題にはならないと思いますが、次の点には留意してください。
 たとえば、同じスピーカを利用した場合、低音が減衰するならば、ふつうその傾向は一貫するので(つまり、低ければ低いほど減衰し、高ければ高いほど減衰しない)、「高音のほうが低音より聞き取りやすい」というような聴覚課題を実施する場合には、音圧操作は気を使う必要があります。というのは、実際は人間の機能上低音が聞き取りにくいのではなく、スピーカから(わずか1dBとかかもしれませんが)減衰して提示されたために「聞き取りにくい」という結果が現れたのかもしれないのです。少なくともそういう突っ込みが入る可能性は充分あります。
 というわけで、必要に応じてしっかり音圧は計測しましょう。

3.ヒトの聴力は左右等しくない
 これは当たり前といえば当たり前で、視力だって左右で異なるのだから、聴力も左右異なるのは直観としてわかると思います。このあたりは、実験内容によっては、被験者の数を充分に増やせば、sound pressure level (SPL)、すなわち、スピーカから出てる音圧がそろっていることを示せば、影響はキャンセルできるとも考えられます。
 問題は、たとえば左右に異なった音源を提示するだとか、左右の脳活動の差を見る、とかいうときで、この場合は当然左右の音圧は(実験条件に関係していれば当然、していなければなおさら)、被験者の聴力に(これをsensory level; SLという)そろえる必要があります。そのためには、事前に被験者の閾値を調査し、その上で刺激の音圧を左右独立に調整する必要があります。被験者の閾値を測定したあとに調整をするというのは難しいことも多いので(特に単音ではなく、メロディ系列を用いる場合)、そのような場合は事前に何パターンか音圧を変えた刺激を作成しておくほうが良いかもしれません。(たとえば、左80dB-右82dBで提示するようなメロディを作成しておくなど)

4.E-Prime使用時のポイント
 箇条書きにします。
・Experimental Object(だったかな?最初からある青いEのアイコン)をクリックし、
Devices→Sound(メガホンみたいなアイコン)のチェックをオンにする→使用する音刺激のサンプルレート、ビットレート、チャンネル(モノラルか、ステレオか)を設定
*サンプルレート、ビットレートくらいは多分検索したらすぐ出てくるでしょう
・使用できる拡張子は.wavのみ、またファイルサイズも上限があるので注意
・一応Sound Out ツールアイコン上で、[-10000から0]の範囲で、音量の調整もできる
・これは未確認ですが、Attributeに[sound]という文字列は使えない(エラーが出る)模様…[melody]とかにしておこう

5.結論?
 可能であれば使う音はなるべく少ないほうが良い(1000Hzと1500Hzとかね)。
 音が多くなればなるほど、特に音圧の面で調整しなくてはならない分量が増えます。
 

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2月28日以降の流れ

3月5日…臨床ゼミと一緒にやりました。List et al(2007)の刺激について*ディスカッション
3月13日…上記の発表まとめと、WM講習会資料**配布
*このへんについては、まだまとまってないのですが、夏ごろにはUPできるかもしれません。
**WM講習会については、電子ファイルがないので、アップができません。ほしい方は直接連絡ください。

3月19日…次に読む論文決定。これで一応、LD(ディスレクシア)-自閉症-AD/HDと発達障害を一通り抑え、
大規模:行動研究-小規模:ERP-シングルケース:fMRIで中身もそれなりにバリエーションをもって読めることになるかな、と思っています。無計画のわりには幅広くて一安心。

卒論テーマ提出に関しては、下書きを添付してメールもらえればコメントくらいはします。

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・Lepistö(2008)読了
早かったですね。お疲れ様でした。

・カレーとハヤシライスを区別できない(*1)
スパイス(ガラムマサラとか)を材料としてみても(constant-feature)、カレーの中に入っていても(varying-feature)、
定型発達よりはるかに種類を弁別できる
材料(にんじんとか)を材料としてみても(constant-feature)、カレーの中に入っていても(varying-feature)、
定型発達と同じくらい種類を弁別できる
という場合、材料がスパイスよりもわからないからこの人はカレーとハヤシライスの区別ができない、
という話にはならないと思うのです。

問題は、スパイスがわかりすぎるために、「その影響を受けて」カレーとハヤシライスの区別ができないところにあるのではないか、と思うわけで、
ひとつの考え方としては、これは結構高次機能の影響によるものと考えられるので、MMN(結構低次な機能の反映と考えられるので)見て意味あるのか、
というのは結構研究上クリティカルな問いになるかもしれません。
メロディのほうで、なんとか違いが見られればいいのですが…仮説はよく考える必要がありそうですね。

ただ、ある意味ではenhanced perceptional functionモデルは優秀です>下位要素の方が数が多いので、上位要素の違いに気づかない

つまり、カレーの場合、スパイスの数が多いわけで、
10個のスパイスがハヤシライスと共通しており、ほかの2個のスパイスの違いがカレーとハヤシライスの差を生み出す場合、coherentな味はぜんぜん違っても、その弁別力の高さがあるゆえに、「ほとんど一緒じゃん(一緒の部分のほうが多いじゃん)」となる、みたいな話なんでしょうか。
カレーとハヤシライスは材料ほとんど一緒みたいなものです…よね?

・卒論のための論文30本マラソンについての質問に対する回答
独自の解釈ですので、参考までに
1.なんでやるのか
論文を何個か読むと、パラダイムは結構共通してることがわかります。
そもそも、実験系の論文を書く際は、興味のあることをいかに実施可能な実験まで落とすか、というところが割りとキモだと思います(*2)ので、実際に見て、あーこういう感じでやるんだ、という雰囲気的なものをつかむのが重要かと思われます。えてして、心理学に関する知見は、実際その知見をどうやって得たのかをすっ飛ばして本には書いてある(つり橋効果とかはまあ、別の話ですが)ことが多いので、知見の得方をチェックしてみるというのはやって損はない、というか必須事項なのだと思うのです。

2.どうやってやるのか
関心のある語で検索をしてみる→それなりにヒットすると思うので、とりあえず新しいほうから5本くらい読む
→多分共通して引用される論文があるので、それにあたる→基礎として抑えておいたほうがよいな、と思うものが多分みつかるので、それを読む
というのを、関心のある語を3種類くらい用意してやればあっという間といえばあっという間です。
渡辺は英語が読めないので大変時間がかかりますが、30本も読むものねーよ、という状況にはならないです。

(*1)実際問題として、自閉症がカレーとハヤシライスを弁別できない、という話がよくあるということではありません。念のため。
(*2)もちろんキモはたくさんあるんですが、スタートラインとして

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2月28日(木)10:00-12:00
終了しました。

TITLE:The perception of invariant speech features in children with autism 
AUTHOR:T. Lepistö, M. Kajander, R. Vanhala, P. Alku,
M. Huotilainen, R. Näätänen, and T. Kujala
Biological Psychology Volume 77, Issue 1, January 2008, Pages 25-31
sciencedirect該当ページ

渡辺による訳は⇒
自閉症を持つ子どもにおける不変の発話要素の知覚について


2/24 Result終わりまでUP.
2/25 全訳完了。次何読もうかなー
例の修論については、希望者にコピーをお渡しします。
渡辺に直接メールするか、右メールフォーム(設置してみました)から連絡ください。

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上がSSG法、下がKlattモデルの元論文のようです。
Lepistö(2008)の論文で出てくるものです。
そのうち読むかもしれませんが、卒業論文で母音とか使いたい人は、読んだら教えてください。

Alku, P., Tiitinen, H., Näätänen, R., 1999. 
A method for generating naturalsounding speech stimuli for cognitive brain research. 
Clinical Neurophysiology 110, 1329–1333.

Klatt, D., Klatt, L., 1990. 
Analysis, synthesis, and perception of voice quality variations among female and male talkers.
 Journal of the Acoustical Society of America 87, 820–857.

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