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おかげさまでspamコメントが増えてきましたので、一応コメントを承認制にしました。基本的には承認します。

あれこれのメモ(おとついの記事)時間作成に関する論文(篠原一光)Information processing speed is intact in autism(by Wallace, Anderson, & Happe)を読みました.

前者はそれなりに重要だったので,あとでちょっと長めにレビューしますが,後者はびみょーに関係なさそうだったので,もしかしたらしばらくしたら戻ってくるかもしれませんが,とりあえずアブストラクトのご紹介だけさらっとして次に行きます.

Abstract: inspection time (IT;検査時間?)によって測定されるような情報処理のスピードは,知的機能の明白な予測材料である.しかしながら,自閉症と低いIQを持つヒトの間では,ITは素早いほうに乖離し,高IQの定型発達者のものと同等であることが報告されている(Sceuffgen et al., 2000).本調査は,この研究を再現し,IT およびASDを持つ子どもの群の高機能(平均IQの平均的なレンジにいる)におけるIQ,およびマッチされた統制群と,ITの関係を試験することによって,この研究を拡張した.ITは,マッチされた統制群にたいして,ASDが有意に早いとはいえなかったが,ITとIQの関係は,ASDにおいて独特な乖離を示し,先行研究を部分的に裏づけし,拡張した.
それで,ITというのは,IT…Nettelbeck,1987によるレビューを参照,ということでして,これページ数出てないんですが,まあ,この論文の2ページ目左側中ごろに,
IT is “the stimulus exposure duration required by a subject to make a simple perceptual judgement, for example, the relative length of two lines.” 
という記述がありまして,そこからのやや意訳ですが,
ITは,被験者が単純な知覚判断,たとえば二つの線の長さの比較を行うことに必要な,刺激暴露長である.そこで,ITは,ヒトが一貫してかつ正確に刺激要素を弁別できる最小の刺激暴露を記述する.ITを測定するために,刺激の暴露時間は,正確なパフォーマンスのために必要な提示の最小時間を決定するために,いろいろに変えられる.反応時間は測定されないことに留意すると,ITは,反応するときに,運動が必要であるとか,”試行時間”が交絡するといったような,反応時間(RT)研究に関する難しさを,原理的に(inherent;生得的に,とか)避けることになる.…定型発達(TD)成人および子どものメタ分析研究をもとにすると,ITと知能の間の相関は,-.50付近をうろつく(Grudnik and Kranzler 2001; Kranzler and Jensen 1989; Nettelbeck 1987).
ということのようです.

自閉症を持つ人たち,および統制群に,WISC-Ⅲのロバストな(これはWallaceとHappeの2008年の論文でも同様の主張があって,元論文はSattler,1992らしいですが,読んでない)下位検査であるVocabulary(多分,単語)と積木模様を実施してもとめたFSIQと,"space invader"の図の中に,二本の棒があって,その長さが同じか,違うかを弁別させるときに,70%の正確さで反応できる刺激暴露長,つまりITを求めて,その相関を出した,ということのようです.結果としては,4P目のFigure.1を見て下さい,ということになりますが,統制群はちゃんと負の相関が出る(r = -.59, p = .002)のに対して,ASDは無相関に近い(r = -.08)結果になります.で,ASDのITは概ね30-50ms付近に収まっていて,これはTDで言えばFSIQが85-110くらいの人たちが収まる範囲である,というかたちになります.

ただ,ぱっと見,TDのFSIQ80-100くらいの人たち,というのが非常に多くて(団子になってて),一方ASDは,FSIQのばらつきが大きい,というのは少し気になるところで,IQ70-90に属するTDとか,いないように見えるんですよね(ASDは3人くらいがこのあたり).だから教訓としては,こういう相関を出す時,マッチさせた部分というのは,平均値とレンジだけじゃなくて,分布もなるべくそろえましょう,ということででも難しいよねー,これは.ただ,もちろん,その範囲のヒトがいる/いないでどうこう,ということは,まあそんなにないだろう,ということで,この結果についてはちょっといずれじっくり考えます.今日は紹介のみ.


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TPAを測定するためのいくつかの素材。Table1.に、対象年齢と、TPAの3要素のうち、どの要素に関する検査がどれだけあるか、が乗っている。

  • Griffths scale(Grrihths,R. (1970). The Abilities of Young Children: a Comprehensive System of Mental Measurement for the First Eight Years of Life.)
  • LOTCA(Loawenstein Occupational Therapy Cognitive Assesment;Katz,N., Itzkovich, M., Averbuch, S. & Elazar, B.(1989) LOTCA battery for brain-injured patients: reliability and validity.→脳損傷の患者のためのバッテリー。
  • MPU(Motorisk perceptuell utveckling/Motor-perceptual development;Holle, B., Bönnlycke, K., Kemp, E. & Mortenssen, L. T. (1990) MPU.)
  • PEDI(Pediatric Evalulation of Disability Inventory; Haley,S., Coster, W., Ludlow, L., Haltiwanger, L. & Andrellos, P.(1992) PEDI:Development, Standardisation and Administration Manual.
  • WPPSIとWISC.これは、時間定位に関する項目がWPPSIには6つ、WISCには8つあるらしいけど…どれだ。季節をいってください、とか、それ系の項目を数えているんでしょうか。

いずれにせよ、ほとんどは時間定位にかかわるもので、時間知覚をやっているのはLOTCA(1項目)とPEDI(3項目)のみ、時間管理に関する項目はない、ということ。それで、KaTid(Kit for assessing Time Processing Ability)が開発された(Alderman & Janeslätt,2004. Development of a tol for assessing of time processing ability in six-year-old children/スウェーデン語論文?)、ということですね。

このKaTidの精神測定属性を、最近のテスト理論である、Rasch model(Embretson & Reise, 2000; Bond & Fox, 2007)を用いて調査した、ということのようです。で、このRaschモデルというのは、各種の健康対策(診断?)を改善し、評価するための、線形の(?:linear)算定ツールをつくるのに役立つ、そうです。Appendex Bによれば、人文科学におけるさまざまなフィールドの新しい算定法の改善と評価を増進するために用いられ、さまざまな検査方法を補佐しているようです。累積するロースコアを、線形の連続尺度(間隔レベルのデータを基盤とした統計的分析に用いることが可能)に変形できる、ということで、ああそうかなるほど、各テストバッテリーで得たデータを、統計的に取り扱いやすくするモデル、という理解でひとまずはよさそうですね。時間があったら一個くらい論文を読んでみてもよいかも。誰か知ってるかな?

方法以下はまたいずれ。G. Janeslättさんの博士学位論文(PDF,2MB越え注意)を見つけたので、載せておきます。

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自閉症の時間処理あたりに関心があるので,それ系のメモをしようと思っています.PubMedで,time perception autismで検索したら出てきたやつ.

G. Janeslätt, M. Granlund, I. Alderman and A. Kottorp. (2008). Development of a new assessment of time processing ability in children, using Rasch analysis. Child Care Health Dev. 2008 Nov;34(6):771-80.Pubmedの該当ページはこちら、Wileyのリンクをはったらセッションエラーになっていたので、Pubmedに。各自飛んでください

Children with disabilities such as autism (Peeters & Gillberg 1999; Szelag et al. 2004), ADHD (Smith et al. 2002) and Intellectual Disability (ID) (Owen & Wilson 2006) often demonstrate problems in everyday life related to difficulties in time perception, time orientation and time management; in this paper the product of the three are named, time processing ability (TPA).
自閉症(のような能力欠陥)を持つ子どもたちは,しばしば時間知覚や時間定位(?),および時間管理―本論文では,この3つの構成を,時間処理能力(TPA)と名づけた―における困難に関わる,日常生活での問題を示す.ということで,自閉症に関しては,ひとつはAmazonで売ってるこれ(Peeters & Gillberg, 1999)で,もう1つはIngentaConnectに論文がある(Szelag et al., 2004)ようなので,これはちょっとチェックしておきたいところ.AD/HDとIntellectual Disability(知的障害?のわりに,引用文献のタイトルが"Learning Disability"となってるあたりがちょっと気になるけど)のほうは,時間があれば.

それから,この定義は重要.

  • Time perception is defined as the experience of time; specifically the mental functions related to the subjective experiences of the length and passage of time (WHO 2001), including interval timing perception (Meck 2003). The ability to understand and estimate duration of time is crucial in time perception (Friedman 1977; Block 1990; Grondin 2001). How we perceive time in daily activities is also linked to many factors like the quality of the activity and the context (Larson 2004).
  • 時間知覚は,時間の経験として定義される.特に,時間の長さと経過の主観的経験に関わる心的機能であり,間隔計時知覚を含む.我々が日々の活動においてどのように時間を知覚するかは,活動の質や文脈のような多くの要素ともまた関わる.
  • Time orientation is related to awareness of the day, date, month and year (WHO 2001) and to understanding of our location in time, relative to other times (Friedman 1990a). The quantification of time and the ability to understand temporal concepts are both essential to the use of information from a clock or a calendar in everyday life (Levin et al. 1984).
  • 時間定位は,日,日付,月および年の気付きや,我々の時間における位置の理解,他の時間との関係に関わる.時間の定量化と,時間的概念の理解の能力は,ともに,毎日の生活の中で,時計やカレンダーからの情報を利用するためには不可欠である.
  • Time management is a superordinate concept used to describe the mental function of ordering events in a chronological sequence and allocating amounts of time to events and activities (WHO 2001). Time management is also referred to as the ability to know what tasks to do, when to do them and for how long and contribute to reduced independence in many major life domains of persons with disabilities like autism or ID (Newman et al. 1995; Davies et al. 2002).
  • 時間管理は,時間的順序に出来事を並び替える心的機能を記述するのに用いられる高次(上位)の概念であり,出来事や活動の時間の総量を配分する.時間管理はまた,何を,いつ,どのくらいの長さでするかを知るための能力にも関わり,自閉症や知的障害のような,障害のある人々の多くの主要な人生の領域における独立を妨げることにも関わる.
全部に出てきてる,WHO(2001)というのは,いわゆるICF(Amazonリンク)ですね.これはどっかにあるはずなので読むとして.

とりあえず,いまのとこここまで.お昼ー

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