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おかげさまでspamコメントが増えてきましたので、一応コメントを承認制にしました。基本的には承認します。
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Gomot, M., Belmonte, K. M., Bullmore, T. E., Bernard, A. F., & Baron-Cohen, S. (2008). Brain, 131, 2479-2488.リンクは後ほど。reactivityは反応性、くらいかな。大分改稿しました。

Intro:いきなり余談ですが、本研究では、自閉症を持つ人を、"Autism spectrum condition (ASC)"という言葉で指しています。これは、"自閉症"を代表とする、ある種の行動や認知の傾向は、「障害」ではなく「状態」である、という主張からの名付けであろうと思います。もちろん、その状態が非常に極端に現れれば、現実問題としては障害と呼ばざるを得ないのですが、スペクトラムのどの段階が"障害"で、どの段階が"障害ではない"という切り分けはできない(そもそも、スペクトラムの"どの段階にいる"ということを今のところは示せない)以上、"状態"と呼ぶのが適切であろう、ということなのではないかなと思っています。閑話休題。

本文の要約に入ります。自閉症の障害の三つ組のうち、”同一性の要求(need for sameness)"、"変化への抵抗(resistance to change)"に関する研究はあまり多くはありません。しかし、"変化への抵抗"は、主要な行動上の問題を引き起こしえます。この”変化への抵抗”は、IQとは独立に存在して、全年齢のASCにみられる(Kobayashi and Murata, 1998)ものの、その心理生理学的メカニズムは現在よくわかっていません。反復行動は、高度な系統化(hyper-systemizing)、すなわち細部への優勢な注意における処理過程の結果として理解されているのですが、細部への優勢な注意は、認知パフォーマンスの尺度のみならず、普通ではないASCの感覚行動からも証拠が出てきており、矛盾した音への反応による聴覚モダリティを説明するものです。いくつかの行動研究 (Bonnel et a., 2003; Mottron et al., 2006; Heaton et al., 2008)が、聴覚的注意の情報処理過程および増強されたピッチ処理に焦点を当ててはいるものの、このような高次処理過程を実行する脳のメカニズムについて、機能的表現技術を用いて行った研究は未だありません。対照的に、雑音に対する反応性の低下(hypo-reactivity)はしばしば報告されます(Rosenhall et al., 1999)が、聴覚システムの主要な機能障害は、自閉症を持つ人において見られない(Kellerman, 2005)という報告もあり、自閉症における感覚刺激に対する一貫しない結果は今のところ議論のタネになっています。

ERPや行動研究は、細部への優勢な注意を示唆しており、特に、選択的注意(”確実な(certain)"文脈がある状態での注意)下では、健常と同等かむしろ優れるパフォーマンスを見せる、とAllen & Courchesne (2001)は結論づけています。一方で、この観察は、高頻度には起こらないことについては、変化(新奇感覚刺激)に対する脳の定位がどのように行われるかの基本的な違いに根ざす、ふつうでない処理がなされるであろう、ということも示唆します。この違いが、おそらく"同一性の要求"をもたらすだろう、ということで、fMRIを用いて、異常な変化処理の神経基盤を探ることが本研究の目的となります。

変化検出の神経基盤は、"novelty oddball(新奇オドボール"パラダイムを用いて行われることが多いそうです。(novelty oddballパラダイム:標準(高頻度刺激)、逸脱(事前に知らされる低頻度刺激;標準刺激の任意の属性を変化させる)、新奇(事前に知らされない低頻度;標準刺激の任意の属性を変化させる(変化量は大きいことが多い)が提示される課題。)active oddball(低頻度の刺激をターゲットとして定められ、その数をカウントする)においては、新奇刺激におけるP3振幅は多くの課題で減衰します(p2480,左下参照。沢山あります) が、その減衰をもたらす神経処理過程や脳部位はまだ良くわかっておらず、fMRIによって、その効果をもたらす部位や皮質下/皮質の解剖学的構造を明らかにすることが求められています。

そこで、この研究はfMRIを使っているわけですが、fMRI研究からはどういうことがわかっているかというと、この健常者における変化検出には、かなり広範な脳部位が関わっているということです(p2480,右上参照)。ただ、ASCにおける聴覚新奇標的検出のfMRI研究は今のところないようです。

受動的オドボール課題であれば、逸脱、新奇刺激において脳の低活動を示したという研究があります(Gomot et al., 2006)。しかしながら、先にも述べたように、聴覚的変化に鈍感である場合もあるけれど、むしろ敏感である場合もあって、これは注意メカニズムに関わると考えられます、なので、ASCを持つ子どもに対して、新奇標的音の探索をしてもらうときのfMRIを撮像しよう、ということですね。

目的はもうひとつあって、ASCの次元的性質(? dimenional nature)のテストとしての、自閉症傾向の定量化した数(ようするに、AQ) と脳活動が相関するかを見ることです。”変化への適応”と、変化検出の脳活動は相関すると予想され、そうであれば、広い自閉症表現形(Piven et al., 1997)のような、部分的な症候群の存在を受け入れやすくするでしょう。そのために、AQとSocian Responsivenss Scale (Constantino and Todd, 2003)を利用しています。ひとまずここまで。

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