おかげさまでspamコメントが増えてきましたので、一応コメントを承認制にしました。基本的には承認します。
× [PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。 Heaton, Hermelin, & Pring. (1999). Can children with autistic spectrum disorders perceive affect in music? An experimental investigation.Psychol Med. Nov;29(6):1405-10.の話.これも卒業研究関係で読んでいます.Heatonが中心になってやっている実験は一通り読んだかと思っていたのですが,これは見落としていたなあ,ということでここにメモを残しておきます.論文本体はpubmed linkまたは cambridge pressから. Heatonらは,この実験の前に,自閉症の音楽刺激の知覚に関する研究をいくつかしていますが,自閉症は定型発達との差がないか,むしろ優れた音楽知覚を示すデータが得られています(この実験は,2音間の音高変化量とか,和音内の音変化の弁別とかだったと記憶しています).ただ,音楽認知は,単にtoneの弁別/知覚のみによるものではなく,音楽からもたらされる感情の理解という段階も存在します.今回の課題では西欧の音楽において,長調がpossitive connotationを,短調がnegative connotationを強く示唆する(Helmholtz, 1877; ヘルムホルツは名前くらいは聞いたことがあるけどなあ,というところ)こと,および自閉症に表情認知の障害(これはもう,山ほどありますね.といって,ちゃんと読んではいないのですが…)があることから,表情(感情の視覚的表出)認知に障害がみられる自閉症において,音楽の感情的示唆(本研究においては major = positive, minor = negative)の認知にも障害が見られるかどうかを調べる,というのがこの研究の目的です. 被験者は12人の自閉症を持つ子どもと2人のアスペルガー症候群を持つ子どもであり,年齢は7歳9ヶ月〜15歳,言語性IQが56−126(ME = 92.71),動作性IQが87−147(ME = 108)でした.統制群は,言語性IQ 手続きとしては,まずはじめに顔刺激をみせ,”どんな表情に見えますか”と確認をします.この段階で,自閉症群も統制群もhappy,sadの正しくラベルできているようです.その後,被験者は,これから流れる音楽が,どちらの顔に当てはまるかを,言葉か指差しで答えるよう指示されます. 結果は,両群とも正答率(正答というのは,今回の場合,majorのメロディが聞こえたときhappyを示し,minorのメロディではsadを示すということ.念のため)がチャンスレベルを越えていました(自閉症群と統制群で1名ずつ,12点を下回るものはいたが).3要因のANOVA(調(長,短)*伴奏(有,無)*群(自閉症,統制(言語),統制(動作)))(括弧が三つならんでしまった)によれば,伴奏に主効果があった(伴奏があった方が得点は上昇する)他は,交互作用も主効果もなかった,ということでした. 考察で重要そうなのは, Frith et al. (1994) suggest, ... they might recognize the outward signs of happiness and sadness without understanding the underlying thoughts and feelings of those experiencing such emotions.というところでしょうか. うーん,自閉症における表情認知困難は,リアルな人の顔は複雑であり,その複雑さを"大雑把に"概念化する,という部分の障害(こないだ,ウルトラジャンプのニードレスという漫画でこんなことを言っていた;自閉症の文脈じゃないけど.)…というか,神経接続とか側抑制とか配置の異常によるんじゃないかなと思うんですよね.表情認知の勉強をちゃんとはしていないので,とんちんかんなことを言っているかもしれませんが.だから,今回のような非常にシンプルな二者択一は,表情認知の問題とはちょっとズレがある気がします.major/minor modeとpositive/negativeの関係は,うーん,まあ,たとえばテレビや映画で,こういう結びつきはあるわけで,そういうところからの学習が強く効いている気がします.生得的にmajor = positiveみたいなものがあるのかなあ,ちょっとこのへんはわかりませんね.2009年現在は,アニメとかゲームで,線画とメロディの結びつきが非常に頻繁に行われているので,より優れた成績を示す,という可能性はあるように思います. もし,長調-楽しい,みたいな連合が既に形成されていれば,それを利用して,表情認知の手がかりとする,という支援方法が考えられるかもしれません. APT Onlineの,Katagiri. (2009).The Effect of Background Music and Song Texts on the Emotional Understanding of Children with Autism,Journal of Music Therapy,Volume 46, Issue 1 (March 2009).というのが,関連しそうなところ(BGMによって,感情のcodingとdecoding成績が上昇する?)ですが,これ北大から読めなかったので,複写依頼中です.またいずれ. PR |
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